第12回大会発表概要


題:政治意識とパフォーマンス
――教育の場としての反ブッシュデモ およびアメリカ観光地に関する一考察

発表年月日:2004年12月4日

氏名:越智敏之(千葉工業大学)


 2004年夏、ジョージ・W・ブッシュを大統領候補として指名するためにマンハッタンで共和党大会が開催された。アメリカでは政治的にリベラルな東海岸と西海岸が保守的な内陸部をはさむような形になっているが、この区分けはファッションの世界に関してもそのまま重なるかもしれない。政治的に保守的な内陸部はファッションにおいても保守的で、悪く言えばダサい。この共和党大会は、アメリカのファッションの最先端の地であるマンハッタンを蹂躙する快感を支持者である田舎者たちに与えるため、ブッシュが用意したプロパガンダのようにさえ思えた。もちろん共和党がマンハッタンを開催地として選択した理由は、9・11に絡めて対テロ戦争の正当性を強調するためなのだが、現場で共和党大会の有様を目にすると、そうした政治的な思惑よりも、支持者たちのファッションがニューヨークのそれとは異質で、一目でそれと分かる、といったことのほうが目に付いた。
 今回の発表では、この共和党大会と、それに先立ち決行された反ブッシュデモの様子を、政治的な意味合いよりも、そこにある娯楽性にとくに注目して解説した。シュプレッヒ・コールをラップのリズムに乗せて叫ぶデモの参加者の様子。軍服を着てピエロの化粧で街中を奇声を上げて走り回るグループ。黒い星条旗を掲げて歩く海賊姿の女性。この日のためにペアルックの衣装をしつらえ参加した高校生のカップル。地球を模した巨大なボールをもてあそぶ、これまたブッシュを模したカウボーイと、そのカウボーイの前に立ちはだかり地球ボールを守る、妖精のコスチュームを着た幼女。先端から水を飛ばしながら練り歩く巨大なペニスの風船。政治的な主張が娯楽性の高いパフォーマンスの形を取るのは、反ブッシュ派ばかりではない。その反ブッシュ派を逆に野次るために集まった右翼団体のパフォーマンスもユーモアに富んでいた。ケリー支持を装う彼らが掲げていたプラカードには、「外交政策だって? まずフランスに聴け、だよ」と語るケリーの姿があった。フランスで育ち、フランス語も話せるケリーを揶揄したものだ。
 とにかく政治的なデモ行進は娯楽としても成り立っていた。娯楽性が高いからこそ若者も集まり、子供や若者が参加するからこそ、そこは政治的な教育の場にもなっていた。そうした場所で、政治と娯楽をパフォーマンスを通して融合させる技を彼らは学んでいるのである。アメリカの小説や映画は一般的に他の国のものよりも政治性が強い。そうしたことの背景には、こうしたアメリカの政治風景が一因としてあるのではないだろうか。




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