第15回大会発表概要


題:消費される身体――アニメ『英國戀物語エマ』における身体表象

発表年月日:2005年9月16日

氏名:内田 均(学習院大学PD研究員)


 はじめに、最近のいくつかの同時間帯(深夜枠)のテレビアニメのオープニングと比較し、『エマ』の特徴を概観した。カメラワークを抑制して、日常芝居をしっかりと描いている点、アニメ的な表現を取り入れつつも、詳細な時代考証に基づく演出をおこなっている点などである。次に、作品内世界の身体表象に関して、主にしぐさと衣装について考察した。しぐさに関しては、現実社会におけるステレオタイプとしての女性のしぐさ、ないしはアニメ的(虚構の身体的)なしぐさも見られるが、同時代的なものや日本的なものと、このようなアニメ的なものは混淆しており、明確に腑分けすることは困難である。他方、衣装に関しては、ヴィクトリア朝英国社会における身体消費の態様が、社会階級によって異なるということが、この作品からも抽出できる。この点について、当時の絵画や写真に見られる身体の描かれ方や消費のされ方と比較してみた。また、女性が同性の身体を見る際の視線の多様性にも言及し、さらに、そのようなイメージとしての身体の視覚的消費というものが、現代日本においてどのように変換され、重層化されてきているのかを明らかにした。このように、当時の写真や挿絵から現代のアニメ・マンガ等に至るまで、メディアというフレームを通して視覚的に消費されるヴィクトリア朝の身体に関して、大まかにまとめたのが以下の図である。『エマ』は、その作品とそれが消費される社会的文脈を通して、ジェンダーとしての身体が歴史的に構築されたものであることを教えてくれると同時に、そのことを隠蔽し、あるいは相対化するイメージの力の働きをも垣間見せてくれるのである。


※この図はクリックで拡大できます。





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