第17回大会発表概要


題: オーロヴィルの紹介への序説

発表年月日:2006年3月10日

氏名:金原義明(著述家、翻訳家、明鏡舎・代表取締役)


 南インド、タミルナドゥ州にあるコミュニティー「オーロヴィル(Auroville)」について説明しました。説明に先立ち、まず「コミュニティー」「コミューン」の語意や、オーロヴィルがある土地柄の特殊性について確認しました。すなわち、コミューンの語が持つ軽蔑的な語感、狭義のコミュニティーの筆者なりの定義、アーリア人の侵入によって南へ追いやられたドラヴィダ語圏の中のタミル語、英領インドが独立した後15年たってようやくフランスから復帰したポンディチェリーの歴史などです。
 ベンガル湾に面したポンディチェリーの町から北西へ12キロメートルほど行った場所に、約800ヘクタールの円形の敷地全体が森におおわれた巨大なコミュニティー「オーロヴィル」はあります。メンバーの数は約1700人(2003年2月時点)で、住人の国籍はインド、フランス、ドイツなど36カ国にわたり、日本人も3人います(2006年現在日本人は4人)。瞑想用の黄金のパビリオン「マトリマンディ(母の寺)」を中心に、銀河をイメージしてデザインされた広大な森林の中に、約90の集落が木々の葉陰に隠れるようにして点在しています。青々とした森林は、もともと赤土の荒れ地にすぎなかった土地に、初期のメンバーたちが1本1本植林して育てた成果です。
 次にオーロヴィル設立に関係深い2名の人物について解説しました。1人はインド独立運動の闘士であり神秘思想家である「聖オーロビンド」ことオーロビンド・ゴーセ。もう1人は、オーロビンドのパートナーであり、オーロヴィルの設立者である「マザー」ことミラ・アルファサです。彼らはともに心霊主義者、霊的超能力者であり、魂は不滅であり輪廻を繰り返しながら進化していくという思想の持ち主です。そんな2人の横顔と思想、そしてオーロビンド・アシュラム(修行道場)から、教育センター、オーロヴィル建設へと発展していく経過を年表を参考にたどりました。オーロヴィルのテーマは人類の調和で、世界の人々が国籍や宗教を超えて手をつなぎあって暮らす世界都市を目指しています。また、人類の次にくる新しい種のための準備のための施設であることも意図されています。そんなマザーの提唱のもとに、インド政府やインドの各州、国連のユネスコ、世界各国の政府機関や非政府機関の協賛を得て、オーロヴィルは1968年に設立され、と、設立までの経緯までお話ししたところで時間切れとなりました。
 本来ならこの後、実際のオーロヴィルの運営ぶり、住人たちの横顔、多国籍村の生活風景、経済的な不平等や入会の機会不均等などの問題点、目論見と現実のギャップ、また「真理はひとつ、でもそれに至る道はたくさんある」という寛容的な宗教観などについてもお話しする予定でしたが、肝心の現実の部分に触れられず、序説の序説のようなものになってしまい、ひじょうに申し訳なく思っております。失礼いたしました。




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