第19回大会発表概要A


題:なぜ沖縄の吉野家にはカウンター席がないのか?

発表年月日:2006年9月15日

氏名:山本伸 (四日市大学環境情報学部
メディアコミュニケーション学科 助教授)


 今回の発表では、沖縄の吉野家にはどうしてカウンター席がないのかという素朴な疑問をきっかけに、そこから沖縄のコミュニケーションのあり方を探り、さらに一歩踏み込んでそこに満ちあふれるグローバリゼーションへのカウンターカルチャーとしての沖縄のローカリズムについて言及した。吉野家は牛丼チェーンとしてあまりにも有名であるが、全国に展開する約1000店舗の客席レイアウトの99%は「カウンター形式」である。これは、あくまで「うまい、安い、早い」をキャッチフレーズにファーストフード店吉野家が、「早い」を実現する上ではなくてはならないレイアウトであって、そのおかげで店員はすばやくスムーズに客から注文を取り、牛丼を提供することができる。いや、それだけではない。「安い」を実現する上でも、このレイアウトは大きく関わっている。いわゆる薄利多売の原理だ。客の回転率を上げることで、客単価を下げることに成功しているのである。となると、この客席レイアウトはやはり、まさに吉野家の要と言っても過言ではないはず。にもかかわらず、沖縄にはそのレイアウトは導入されてはいない。沖縄にある12店舗はすべて、カウンターではなく「ウォークアップ形式」なのだ。渇ォ縄吉野家社長へのインタビューによれば、当初は他と同様に何も考えずにカウンター形式で始めようとしたらしい。ところが客が入らない。むろん、味や値段は問題ではなかった。問題は、カウンターというレイアウト。中嶺社長によれば、沖縄のお客は相席もしないし、行列に並ぶこともしないということからもわかるように、知り合い同士のグループで食事をしに行くのが常だという。つまり、社長の言を借りれば、「外食はレジャー」であり、時間をかけてみんなでワイワイ楽しむものなのだ。当然、吉野家にもそのような場であることが要求される。つまり、カウンターではじっくりとみんなでコミュニケーションをとって楽しむことができないというわけだ。まさに恐るべし、吉野家のグローバルビジネスコンセプトを変えさせた沖縄のコミュニケーション濃度の高さ!であるが、その原動力をさぐる過程で、私は人間のコミュニケーションには三つの層があると提言した。それはピラミッド構成で、最上位には人同士のインターヒューマンなコミュニケーションがあり、これは「見える。見えない、聞こえる、聞こえない」という要素でいえば、「見えて聞こえるもの」とのコミュニケーションである。そして、これを支えるものとして中間層には「見えるが、聞こえないもの」、つまり自然等とのコミュニケーションがあり、最下層には「見えず聞こえないもの」、すなわち神や先祖、死者といったものとのコミュニケーションがあるのではないか。下の層に行けば行くほど、それは非合理なコミュニケーションといわれがちだが、多くの哲学者や文学者がすでに指摘しているように、人間存在にとって非合理な要素ほど重要な意味をもつことからすれば、この下の二層こそ重要なのであり、そこが充実しているからこそ沖縄の人々はもっとも合理的なコミュニケーションといわれる人同士のそれに長けているのではないか、というのが結論である。上からのグローバリゼーションに一石を投じる事例だと思う。




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