題:信州白馬の一ペンションより 発表年月日:2007年6月30日
はじめに氏名:室伏 鮎太氏(白馬ペンション経営) 私は、信州白馬五竜の麓にて、赤レンガのペンション『山の森』を家族経営しております。小さな庭には野生の草花を自生させ、館内には木製のテーブルチェアやベッドを使用し、山里の宿をイメージした環境をお客様に愉しんで頂いております。今回定例会の発表の場をお借りしまして、観光村白馬の実態と今年で開業30年目を迎えた山の森のペンション業につきまして、紹介をさせて頂きました。 白馬について
この白馬という土地は、名前の由来である春山の岩肌の『代掻き馬』に象徴される通り、かつては小さな山裾の農村でした。それが登山とスキーのブームに後押しされ、昭和の初めに観光地へと変貌をし、1998年に長野オリンピックの競技を催行して、村の観光産業はピークを迎えました。しかし、オリンピックを境に観光客は四季を通じて激減をし、地価の下落や人口の減少などにその影響が現れてきております。 ペンション業とは一見、お客様への接待だけが仕事のようなイメージですが、実際は準備と片付けが仕事のほとんどを占める、肉体労働のようなものです。田舎の宿は都市ホテルと異なり、常にお客様を迎える用意をしても部屋の稼働率が非常に悪く、多くの場合で労働と料理の仕入れに無駄が起きてしまいます。ペンションへ泊まるお客様の多くは、宿の料理に期待していると言っても過言ではありません。山の森は食の素材選びにこだわり、魚料理は一般的な魚から少し異なるものを日本海から仕入れ、野菜は地元の産直から鮮度の良いものを選び出し、お米は無農薬・減農薬米という食の安全に配慮するなど、素材のそのものの美味しさを既製品の調味料を使わず調理させて頂いております。 最後に観光業、特に宿泊施設営業は、お客様に喜んで頂いて始めて成り立つ業種であります。常にお客様の声に耳を傾け、そのニーズに応えるのが私たちの使命であり、その役目を忘れて自分たちの考え主体に開発を進める村の姿勢には、私は大変な危機感を覚えております。山の森はお客様主体の環境作りを念頭に、白馬の新しい姿の観光地作りの試金石として、一役担っていくつもりであります。 |