第24回大会発表概要@


題:日米オタク文化に見る「ジェネレーションY」と「団塊ジュニア」

発表年月日:2007年12月08日

氏名:丹沢和夫 氏(ジャーナリスト) 


 日本のオタク文化がデジタル時代のサブカルチャーとして、いま世界で注目を浴びている。アニメ、ゲーム、アイドルなどを中心にしたオタク文化は、メイド喫茶の林立する聖地秋葉原を中心に興隆をきわめ、毎年東京ビッグサイトで開かれるコミックコンベンション(コミケ)は入場者数55万人を記録。オタクが美女との恋を実らせるドラマ「電車男」の大ヒットや、オタクのアイドルAKB48のNHK紅白出場など、かつてのネガティブ・イメージは完全に払拭され、世界に冠たるオタクワールドはその全盛をきわめ、一部の経済アナリストによると、その市場は数兆円にも達するという。
 一方、アメリカにおいても、オタク文化が興隆している。日本発のゲームやアニメ・ファンを中心に、少女MANGAが人気を博し、MANGA雑誌やオタク専門誌が相次いで創刊。全米津々浦々にオタク専門店が軒を連ね、全米各地で開かれるコミケにはコスプレ姿のオタクたちが集まり、サンディエゴ・コミケは入場者数12万5000人を記録。アメリカオタク市場は1000億円にも達すると言われる。
 こうしたオタクの定義としては、マニア性、非現実性、デジタル性、非社交性、少年性、非営利性などを挙げることができる。これらの要素は、オタクの母体世代である団塊ジュニア世代の持つ特質でもあり、彼らのうちの前衛がオタク文化を生み出したとも言えよう。また、アメリカオタク世代の母体であるジェネレーションYもこれらの要素を共有しており、その結果オタク文化を受け入れることができたのである。
 これまでアメリカは、ジャズ、ロック等、多くのサブカルチャーを生み出してきたが、その原動力は強烈な自己実現を是とするアメリカ的価値観の生み出すパワーであった。一方、過去の日本のサブカルチャーはほとんどが欧米のコピーであり、サブカルチャーの本場アメリカで受け入れられることはなかった。
 しかし、90年代に入ると、格差の固定化、ドラッグ、犯罪、心の病など、これまでの価値観では克服できない複雑な現実の前に、アメリカ的価値観に限界が見え始めてきた。デジタルカルチャーの主役Nerdたちは、こうしたアメリカ的価値観にあきあきしたジェネレーションYの前衛であった。
 日本オリジナルのアニメやゲームで育った彼らにとって、日本は憧れの国。日本アニメやコミックに表れた人間の弱さ、繊細さ、複雑さなどを含む多元的な価値観や文化は、来るべき新時代の価値観として彼らのこころを掴み、オタク文化を受け入れさせたのである。いまやアメリカのみならず、パリやバンコクにもメイドカフェが登場するなど、世界がオタクに注目。日本のサブカルチャーが史上初めて世界をリードする時代になったのである。




ここはポップカルチャー学会のホーム・ページです。
(c)&(p) 2005-2008 Association of Pop Culture Studies
This site is created and maintained by Yoshifum! Nagata
for Association of Pop Culture Studies.

Can't see the frame? Click here.
サイト・トップはこちら。