題:キャラクター小説を書くということ 発表年月日:2011年06月04日
2009年の暮れから取り掛かって、初のキャラクター小説執筆に挑戦した。氏名:遠藤 徹 (同志社大学 言語文化教育研究センター教授/作家) きっかけは、角川の編集部から、メタ的なものではなく売れる小説を書きましょうといざなわれたことだった。 個人的には多少の逡巡もあったが、その前に書いた入魂の一作だった『ネル』がまったく評価されなかったことへの悔しさをバネに、同じ主題をつかってエンタメを書くということには興味をひかれた。何より、いわゆるキャラのたった小説というものがはたして自分に書けるのかどうか試してみたいという思いもあった。 それまでの自分は、言葉やフレーズ、あるいはひとつのイメージをもとに書きながら先を考えるという書き方をしていた。つまり、書き始める時点ではあらすじも結末も用意されていないというものであった。 これに対し、今度の小説ではあらかじめキャラを設定し、あらすじを作成することが求められた。 そこで、手にとったのが大塚英志著『キャラクター小説の作り方』(角川文庫)であった。いわゆるリアリズムの小説に対し、「マンガの世界を言葉で描く」ような小説をキャラクター小説と規定し、大塚氏はカードによるプロット作りというきわめて具体的な方法を示してくれていた。 なにしろ自分はキャラクター小説初心者であるから、これに素直に従うことにして、まずはカードによるプロット作りから始め、キャラクター表を作成した。それをもとにしたあらすじを何度も書いては編集者とやりとりし、結局あらすじは七回書き直したことになる。 とはいえ、ここまで出来上がれば、これまでの小説とは違って後は楽だった。なにしろ冒頭から結末まですべて筋が決まっているのだから、あとは書くだけだからである。 出来の良し悪しはともかく、あるいは売れ行きの良し悪しはともかく、ひとつの作品をこれまでやったことのない方法でとにもかくにも書き上げることができたことには満足している。 一方で、やはり自分としては、本来の自分の書き方であった自動書記的な方法に魅力を感じる。次に機会があれば、この両者を結び付けるようなやり方を考えてみたいと思っている。 |