題:モラン大佐とシルヴィアス伯爵 -- コナン・ドイル作「マザリンの宝石」の成立についての一考察 発表年月日:2001年12月8日
コナン・ドイルによる二篇のホームズもの短篇、「空家の冒険」('The Adventure of the Empty House', 1903)と「マザリンの宝石」('The Adventure of the Mazarin Stone', 1921)との間には、いくつかの類似点が見られる。後者は、ドイル自身によるホームズ劇、「クラウン・ダイヤモンド」('The Crown Diamond', 1921年初演)を小説化したものである。「クラウン・ダイヤモンド」に敵役として登場するのは、「空家の冒険」の悪役、セバスチャン・モラン大佐である。小説化に際しては、敵役の名がネグレクト・シルヴィアス伯爵に変更されている。氏名:飯塚聡(専修大学等非常勤講師) これら三篇の作品を比較対照することにより、「クラウン・ダイヤモンド」は「空家の冒険」の戯曲化であり、従って「クラウン・ダイヤモンド」を再小説化した「マザリンの宝石」と「空家の冒険」とは実は同一の物語であること、そして、二人の悪役、「空家の冒険」(及び「クラウン・ダイヤモンド」)のモラン大佐と「マザリンの宝石」のシルヴィアス伯爵とはもともと同じ人物であったことを検証した。 |